読書感想:たとえば俺が、チャンピオンから王女のヒモにジョブチェンジしたとして。

f:id:yuukimasiro:20200815233958j:plain

 

 

かつて世界の誰かが言った、人の価値は職業ではなく生き方で決まるのだと。では画面の前の読者の皆様。もし貴方の価値が生まれながらにして神様などという訳の分からない存在に決められているとしたら、貴方はどんな思いでその世界を生きていくのだろうか。

 

天性の「職業」なるものにより人の人生が決まってしまう世界。この世界の闘技場、コロッセオにおいて最強を誇る青年、フウタ(表紙左)。

 

 

しかし、彼は蔑まれ観客からは不評を買っていた。それは何故か。その理由は彼の職業が「無職」であり、闘い方も自らの武を誇りと武器にし戦うのではなく、敢えて相手と同じ武器を使い叩き伏せるという、まるで相手の土俵に土足で踏み込み、軽々と飛び越えていくかのような所業であるからだ。

 

不評を買い蔑まれる事に疲れ果て。甘言に乗せられ八百長試合に手を染め追放されるフウタ。

 

だが、彼はとある少女と運命的な出会いを果たす。彼女の名はライラック(表紙右)。第一王女でありながら政治の世界で活躍し、王女ながら剣の達人という強者である。

 

彼女に拾われ、食客として王宮で寝泊まりする事になるフウタ。

 

そんな彼に興味を持ち仲良くなろうとする者もおれば、不信感を抱き排除しようとする者もいる。そしてコロッセオ時代の彼を知っており、追ってくる者だっている。

 

そう、どこまでいっても彼は過去からは逃げられず。辿り着いたと思った安息の地すらも方向性の違う戦いに塗れた場所だったのである。

 

手合わせを願い、挑みかかってくる者達に力を示し、徐々にその力を認められていくフウタ。

 

そして彼は知る。何故ライラックが彼を拾ったのかという事を。切れ者として信頼を集める彼女が何を願って、誠二の闇の裏側で暗躍しているのかの理由を。

 

その理由を知り、当然のごとくフウタは彼女の側に共にある事を選ぶ。それは何故か、何故ならばフウタは彼女に文字通り命を救われたから。あの日拾われなければ、今その命はなかったから。

 

「俺の人生、全部王女様にあげます」

 

その言葉は、彼と同じように自らの職業に苦しめられ、ずっと一人で戦っていた彼女へと届き、その心の壁を打ち崩す。

 

 


この作品はファンタジーである。そして面倒な鎖に誰もが縛られる世界で、その鎖をぶち壊し全てを破壊し、混沌を導こうとする二人の世界に対する反逆譚であり英雄譚なのである。

 

大きな枠組みのファンタジーが好きな読者様、頑張りが報われる世界が好きな読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。

 

https://www.amazon.co.jp/dp/product/404073744X/ref=as_li_tf_tl?camp=247&creative=1211&creativeASIN=404073744X&ie=UTF8&linkCode=as2&tag=bookmeter_book_middle_detail_pc_login-22