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さて、画面の前の読者の皆様。貴方は学生であろうか。もし学生であるのならば、学期の期末において一番嫌なものとは何だと思われるだろうか。それの答えはきっと一つだけの筈。そう、学期末試験である。
やはり、ユースタシア学園にも学期末試験は存在する。その試験において優秀な成績を収め勇者課程への転向を目指すカイ。しかしその結果は赤点であった。
だがしかしそれは福音か、それとも悪魔の契約か。カイに対し差し伸べられた選択肢は秘宝である時空時計で過去へと飛び、過去を書き換えてしまうという事。だけどそんな世界の歴史を変えるような事をして、当然彼等の場合においてろくな目に遭わないのは、ここまで読まれてきた読者様であれば当然自明の理であろう。
過去を書き換える事でジルが何故かアイドルになってしまったり、ニーナが何故か神を崇めるようになってしまったり。何度目かの繰り返しの先、ようやくたどり着いたのはカイこそが勇者になった世界。
しかしその世界は、リンが巻き起こした奇跡が全く存在しない、人と魔物の対立がどこまでも続く寂しい世界。その世界でカイの隣にリンはいなかった。
まるですれ違うかのように離れ離れとなるカイとリン達。何処か違和感を抱えながらも魔物達とぶつかり合う戦いに満ちた日々。
だけど、彼女がいない。だからこそ何かが足りない。そして何処か釈然としない。何故か。その理由こそがカイが伝記士として選ばれた本当の理由。忘れかけていたカイの最初の夢だった。
カイこそがリンを冒険の世界に連れ出した張本人。それはめくるべく物語の世界から始まった。だからこそ、彼の手にあるべきだったのは剣ではなくペンだったのだ。間違いに見えた本来の歴史は実は何よりも正しい歴史だったのである。
だからこそ、今度こそは間違えないように。彼女が変えてしまった歴史を本来の歴史に戻す為に彼は行く。
「俺は、今の俺が好きだから」
今まで多数の魔物と絆を繋ぎ救ってきたリン。では最後に救われるべきは誰か。それは、今まで必死にもがいてきた彼女の隣にいた幼馴染、カイなのだ。
最初の気持ちを思い出し、リンの目指す勇者の始まりにも触れ、またもう一度パーティとして本来の歴史を歩き出す。
最後は感動で〆るこの作品。是非とも最後まで一気に駆け抜けてもらいたい。
きっと、満足できるはずである。心から。