前巻感想はこちら↓
さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。ファンタジー世界における王宮とはどんなイメージがあられるであろうか。王との謁見というイベントにおいて、どんなイメージがあられるだろうか。
しかしこの作品、勇者リンの伝説シリーズにおいては王宮でのイベントもまた、ドタバタだらけの混沌にしか過ぎない。ではどんな混沌が繰り広げられるのか。
前巻の最後、王宮へと招かれ舞踏会に参加する事となったカイやリン達。彼等は王宮にて、この国の王女と出会う。
その名はソフィア。何故かニーナにそっくりで、だけどニーナよりもお淑やかな正に王女といった感じの少女である。
しかし彼女は自分の力で飛ぶ術を持たぬ籠の中の鳥である。そして封魔球の普及を促進させる派閥の急先鋒である貴族との婚姻を迫られている悲劇の王女である。
では彼女を救う為には一体どうすればよいのか。カイ達が出した一先ずの方策は、ニーナにそっくりであるという事を活かし、ソフィアとニーナを入れ替えさせるという急ごしらえの策。
しかし勿論、急にうまく入れ替わって上手くいくわけもない。そしてこの入れ替わりこそが、今巻の大騒動の原因である。
まるで某ガキ使のあの企画のように、笑ってはいけない緊張感の元で繰り広げられるお茶会。
更には入れ替わっているからこその混乱となってしまう、メインイベントである舞踏会。
だがそれこそがソフィア王女を救う鍵であった。
彼女は確かに籠の中の鳥であった。しかし彼女に足りないのは羽ではなく、飛び立つための強さであり追い風だった。
だからこそ、今までの自分とは違う自分で過ごした日常、彼女にとっての非日常こそが鍵となった。王女な自分では味わえぬスリルに満ちた狂騒劇が追い風となったのだ。
「いいえ、お母さま! 自分の伴侶くらい、自分で見定められなくては!」
力強く告げられたその言葉に、もはやあの日の弱さはなく。この言葉こそが、籠の中の鳥が籠を飛び出し、大きな空へと一歩飛び立つ証となる。
前巻にも増してどこまでいくのかと言わんばかりの大騒動、だけど少しだけ差し込むふとした感動。
そんな笑いと感動が楽しみたい読者様はシリーズ纏めて読んでみてほしい。きっと楽しめる筈である。