もしも願い一つだけ叶うのなら、何を願うだろう。願いを叶える為の対価として試練を課されたのなら、それは試練に見合うだけの願いであるのだろうか。画面の前の読者の皆様は、もし一つだけ何でも願いが叶う代わりに試練を課されるとしたら、その願いを叶える為に努力できるだろうか。
日本の何処か、とある場所。宿星市と呼ばれるその市には、一年に一度だけの言い伝えがあった。
それはこの市にだけ咲く奇跡の花、ミラク―ティアに願う事で、対価の代わりに白い神様に一つだけ願いを叶えてもらえるという都市伝説のような言い伝え。
その言い伝えを信じ、願った三人の少女がいた。
ヒカリを見失った少女、燈華(一枚目表紙)はヒカリを取り戻す事を願い、ヒカリを失った。
あの人に会いたいと願う少女、泪(二枚目表紙)は誰かの顔が見えなくなった。
本当の父親に会いたいと願った少女、瑠璃(三枚目表紙)は自らの時間を奪われた。
それこそが叶えたい願いに繋がる、それぞれが乗り越えるべき試練。揺れ惑って道に迷い、それでもと突き進んだ先にそれぞれのヒカリがあるのであり、既に胸の中に持っていたヒカリに気付けたとき、ミラク―ティアの花は彼女達の願いの色に咲き誇るのだ。
そしてこのシリーズは、彼女達が願いを叶える物語、だけではない。
では願いという本質に寄り添い立つのは何か。それはこの作品の主人公、叶羽の「再生」である。
最愛の姉を失いヒカリを見失い、モノクロの世界の中で撮った一葉の写真が全ての始まりとなる。
燈華の願いを叶える為共に駆け回り、彼女がヒカリを取り戻した時、彼の目にもヒカリが戻った。
会いたいと願う泪と向き合い、姉との一瞬の邂逅の先に大切な友を得た。
自らと同じように父親との確執を持つ瑠璃との旅の果て、今まで目を背けていた父親と幾年かぶりに向き合えた。
そう、この歩みを「再生」と言わずして何を再生と呼べば良いのか。幾つもの願いの側、自らもその願いのヒカリに照らされ大切なものを取り戻していく、それこそがもう一つの芯なのだ。
俺は姉さんのことを忘れずに、でも少しだけ忘れながら、これから先を生きていくよ。
姉さんと繋いでいた手を、別の誰かと繋いで歩くよ。
誰かの願いが彼の背を押し、姉の面影を背負いながらも振り切って。またもう一度、そうやって歩き出す。
切なく狂おしく、そして何処か温かくて愛おしくて。ちょっと不思議、そして圧倒的な感動が心を揺さぶり焦がしてくる筈の作品であり、感動したいのならば是非読んでみてほしい。
哀しい事にこの作品は三巻で第一部完、続刊が未定と明言されてしまった。だがこの作品は、こんな所で立ち止まってほしくはない。最後まで続いてこそ意味のある作品だから、どうか例え奇跡だとしても、続くことを願わずにはいられない。
だからこそ、私は画面の前の読者の皆様に願いたい。
どうか、何も聞かずに是非読んでみてほしい。私がこの作品を一押ししたい。そして奇跡を起こす為の一助になってほしいと願う次第である。