さて、時に太陽系はいつか滅びるかもしれない。それは遠き未来、我々読者達が恐らく何度となく(そういうものがあるとしたら)輪廻転生を繰り返した先、遥かな時代の先に待っているかもしれないと言われている一つの可能性である。もし、明日から巨大な隕石が地球へ接近してくるというのなら地球は早めに滅びるかもしれない。だけど、太陽系全体が滅びるならどうするか? それは、太陽の死でしかありえないであろう。
そう、太陽の死である。そもそも太陽とて星である。故に、いつになるかは分からないが多分いつか太陽は死ぬ。ではもし、太陽が死ぬとどうなってしまうのか。
その答えこそがこの世界。太陽が死に、世界が大規模な寒冷化に見舞われ常に厳冬の季節となり、灰色と白色の凍えるような世界である。
そんな世界を、とある一つの目的を持って旅する二人の少女がいた。
記憶を無くした自動人形の少女、リーナ(表紙右)。出来損ないの人形技師の少女、レミ(表紙左)。レミがたった一人ぼっちになった日に、まるで運命であるかのように出会った二人は、リーナの死を食い止める為に東の果て、楽園を目指す。
そして、この世界はかのオリュンポスの郵便ポストシリーズの世界の成れ果てである事を示すかのように、どこか懐かしい地名も出てくる星である。その中に確かに息づいている無数の命があるのである。
ボロボロの洋館ホテルには、自らが壊れても使命を全うするホテルマンがいた。
雪と雲に塗れた世界で荷物を届ける、配達屋さんで葬儀屋さんがいた。
古い技術が遺された街には、旧時代の遺物である機関車を甦らそうとする子供みたいな大人達がいた。
そして辿り着いた楽園には、愚直なまでに自らの使命に殉ずる自動人形と、只一人の生き残りである人間がいた。
この終わりかけた世界で、それでも必死に生き延びていた者達。その者達は誰もが、心の中に大切にしている絆を持っていた。それはリーナとレミも同じこと。お互いがお互いの半分であると言わんばかりに、既に別れられぬ半身なのだ。
すれ違い、寿命の果てにその手は離れ。だけど、彼女の言葉があったから帰ってこれた。また生き延びれた。
「よし! あっちだ!」
言ってしまえば何かが変わったわけでもない。何かが解決したわけでもない、ハッピーエンドでもない。それでも、旅の果てに大切なものを見つけられたから、近いうちに死ぬとしても、前を向いて歩いていける。
静かに終わり往く終末世界の中、彼女達の絆がほんの少しの救いと温かさを齎してくれる。そんな仄かな希望が心に沁みるのである。
終末世界が好きな読者の皆様、独特な世界観と重厚な世界観が好きな読者様は是非。きっと満足できるはずである。