読書感想:魔女に育てられた少年、魔女殺しの英雄となる

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は家族には愛されている口であろうか。世界には親の無償の愛を受けられぬ子供達は数多くいる、ならば家族がきちんといるだけでも幸せなのではないだろうか。

 

そういう意味においては、この作品の主人公であるアル(表紙左)はある意味において不幸でありある意味においては、幸運であったと言えるのかもしれない。

 

見ず知らずの少女を事故から助ける代わりに命を落とし、転生した先の異世界では生後すぐに忌み子として捨てられる、正しく人生インフェルノモードかと言わんばかりの大変な状況。

 

この状況に救いの手を差し伸べたのは、「禍事を歌う魔女」と呼ばれ、世界から忌み嫌われる魔女、メーテ(表紙右)。彼女に引き取られ、人里離れた山奥の家で育てられる事になるアル。

 

そこで知っていくのは、魔女の本当の素顔。

 

それは世間で言われるような邪悪さは絵空事、それどころか彼女はアルが困ってしまうほどの過保護であり、彼を真正面から愛してくれる存在であるという事。

 

自らの中に流れる魔力を制御する為、メーテの友、狼であり人でもあるヴェルフとメーテを師匠とし、成長していくアル。

 

しかし、彼は知ってしまった。禍事を歌う魔女、その伝承は真実であるという一面を持ち、メーテは確かに多くの人を殺しているという事。

 

だが、その伝承には誤りがある。それが何かは分からないが、確かな一つの気付き。

 

「メーテ―――僕が魔女を殺してみせるよ」

 

だからこそ彼は決意した。その誤った伝承をぶっ壊すと。魔女の名を殺してみせると。

 

そして彼は戦いの場へと向かう。ふとした切っ掛けで知り合い、自分が傷つけてしまった少女を救う為に。

 

それは英雄の確かな一歩目。小さな一歩ではあるけれど、確かに一人の少女の中の伝承を殺して見せる始まりの一歩。

 

この作品もまた、王道感あふれるファンタジーである。そして、この作品は世界に忌み嫌われ放逐された者達が出会い、家族となる物語なのである。

 

だからこそ、この作品は何処か冷たく温かい。世界が冷たい分、彼等の小さな世界は温かいの。故に、普通のファンタジーでは出せないような面白さを持っているのがこの作品なのである。

 

家族愛が好きな読者様、ファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。

 

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