読書感想:勇者リンの伝説 Lv.1 この夏休みの宿題が終わったら、俺も、勇者になるんだ。

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は冒険に、勇者に憧れるだろうか。もし勇者として戦えるとして、突然にその道が目の前で閉ざされたら貴方はどうするだろうか。

 

とある異世界冒険者養成機関、ユースタシア学園。そこに所属する二人の幼馴染同士の少年と少女が、進路決定の儀式において、運命的な出来事に遭遇した事よりこの作品は始まる。

 

少年の名はカイ。勇者になりたい、剣術は一角のものであったのに、何故か勇者の活躍を物語に記す伝記士となってしまった少年。

 

そして、何の素質もないのに何故か勇者に選ばれてしまったカイの幼馴染の少女、リン(表紙)。

 

夏休みもあと十日で終わろうかと言う頃、己の文才の無さに苦しんでいたカイはアリスから勇者課程の夏休みの宿題、クエスト五つ達成の手伝いを依頼され、冒険の為の5ステップを共にこなす事となる。

 

しかし、変わり者な二人の周りに集まったのも、また変わり者な二人の仲間であった。

 

遊ぶことが生きがいと語る脱ぎ癖のあるニートな元戦士、ジル。

 

ドSな限りの、何故か異世界の一般人しか召喚出来ない召喚士、ニーナ。

 

凸凹にも程がある落ちこぼれパーティ。そんな彼等がクエストの中で出会っていくのは今の世界の真実と、魔物達の真実。

 

今はもう、平和なのだから。ユースタシア学園卒業と言う肩書があっても必ずしも有利とはなりえず、それどころか勇者はもう飽和状態。

 

そして人類にとっての悪である魔物にも心があり思いがあり、叶えてほしい願いがあったのだ。

 

魔物達の真実に触れ戸惑うカイとリン達。そんな彼等に竜の王が告げるのは世界の真実。

 

魔物は決して悪に非ず、悪であるのは寧ろ人間。だからこそ魔物は自分達の世界を作る事を望む。

 

しかし、そこへ待ったをかけるのがリンであった。

 

魔物は悪であると思っていたカイは聖剣を抜けた。それは彼が魔物を殺せる勇者であるという証。

 

しかし、リンは。自らの剣はなまくらでしかない彼女は。何も持たぬからこそ魔物達にも寄り添える心を持っていた。魔物も人間も関係ない、救いたいから救うと叫べる心と気概を持っていた。

 

「勇者だから」。その一言でどんな魔物とも語り合おうとする彼女もまた勇者。殺し合うだけではない、何も殺せぬが故に語り合える彼女は正に、新たな形の勇者なのだろう。

 

これは凸凹な四人のパーティが七転八倒したり賑やかに大騒ぎを繰り広げながら、世界を周る物語であり、華はなく後世に笑われるかもしれないけれど、それでも確かに勇者の物語なのである。

 

画面の前の読者の皆様、躊躇わずに読んでみてほしい。今も尚褪せぬ面白さに出会える筈である。

 

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