人とは違う事、人にはわかってもらえない事。理解を得られないのは辛い事。攻めるのは簡単だけど、もっとも卑怯な事。画面の前の読者の皆様も経験はあられるだろうか。
さてさて、前巻で誠司と琴音の秘密の関係を描いたこの作品(感想は上記参照)、今巻ではなにを描くのか。
今巻で描かれるのは、誠司の後輩であるかぐや。誰かがいないと光れぬと諦めを抱く彼女、誠司の心に届くチャンスを気が付かぬ間に逃してしまった彼女のお話である。
級友の女子グループのリーダーから、自分の恋する人に告白されたのかと詰問され、一つ年上の恋人がいるととっさに嘘をついてしまった事から今回のお話は始まる。
その嘘を何とか貫き通す為、誠司へとお願いをし、ゴールデンウイークを共に過ごし距離を詰めていくかぐや。断り切れず、関わっていく事になる誠司。そして浮き彫りになるのは女子同士の一種陰湿な関係であり、異物を排除するという風潮であった。
人は自分の理解できぬものには寛容になれず、色眼鏡で見てしまい、無意識のうちに悪意を向けて排除しようと動き出すものなのか。そこで折れてしまったら、かぐやという少女はそこまでの存在であったのかもしれない。
だけど、彼女にも譲れぬ想いがあった、そしてその想いを支える出会いがあった。
「オタクって、好きなものを好きって言えるって、最高だよ!」
そう、誰に何と言われようと好きなもんは好き、それで良いのだ。それを貫き通すのは簡単な事ではないかもしれない。だけど貫き通せたとき、変わるものは確かにある。そして、貫き通せたこの時に、かぐやは自らを縛る鎖を打ち壊す事が出来たのだろう。
その勢いを追い風に、誠司へとまた特別となってほしいと手を伸ばすかぐや。だけど、主人公になりきれぬ傲慢な自分を自嘲しながら、既に自分には大切な人がいるからと誠司はその手を振り払う。
そんな彼を支え、見守る事こそ彼女である琴音の役目であり、だからこそ彼女はヒロインなのである。
別行動を取ることになっても、暇を作っては覗きに来て。かぐやと関わる事を謝る彼氏を肯定して、甘やかして。
「篠宮は自分で言ってたけど、私の彼氏なんだよね?」
だけど心のどこかに不安と不満があったから。ふと漏れ出た可愛い嫉妬が愛おしい。
青春は痛い。痛くて残酷で、だけど友情と慕情が確かにあるから青春は瑞々しくて甘酸っぱくて愛おしい。そう訴えかけてくるかのように、一気に様々な色を見せ化け始める今巻。前巻を読んだ読者様は是非読んでみてもらいたい。きっと満足できるはずである。