読書感想:ジョブホッパーの魔導譚

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突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方は社会人であるなら転職したことはあるだろうか。あるとしたなら、全く別の職種に転職されたことはあるだろうか。

 

ジョブホッパー、あまり耳にした事のないその単語は普通であれば、短期間に様々な職種へ転職した者の事であり、様々な職種を経験しているという強みがある者である。ではそんなジョブホッパー異世界でスキルになってしまったのなら、一体どんなスキルとなるのか? その答えが、この作品におけるジョブホッパーというスキルである。

 

最強クラスの冒険者、レオン(表紙左上)、かつて最強の回復魔法使いの冒険者だったソフィア(表紙右上)。その二人から生まれたサラブレッドとも言える少年、レイ(表紙中央)。日本からの転生者である彼が得たのが、ジョブホッパーのスキルである。

 

ではそのスキルとは如何なるものか。それはひとりにつきひとつの天職という大原則を根本から否定する、複数ジョブを選択して転職できるというある意味チートなスキルであったのだ。

 

ではそんなスキルを得たレイは一体何をしているのだろうか。英雄的冒険だろうか。それとも勇者的な行いだろうか。

 

否、彼が行っているのはこの世界における普通の生活である。幼馴染達と共に過ごす、ゆっくりと成長していく何でもない日常である。

 

そう、彼は転生者であり特別である。だけど勇者じゃない。本当の意味で特別ではない。言わば今は未だ、運命の大河への航海へと乗り出していない状態である。

 

そして、この作品は群像劇のように様々な視点が入り交じり一つの切欠が幾多の視点が交錯する物語を呼び起こす作品である。

 

作者様が後書きで語っている通り、本筋であるレイの物語の裏で、注目されない主人公達によるサイドストーリーが幾つも進行している。だからこそ、一つの切欠が唐突に運命の扉を開き、大騒動を巻き起こすのである。

 

「僕もやらないとな・・・・・・」

 

子供達が起こしてしまった邪神の封印の解放、そこから唐突に始まる街の危機。その中へと巻き込まれたレイは必死に今できる事を為すも、全ての解決とはならず、新たな展開への伏線は知らない間に伏せられる。

 

この作品は群像劇である。そして、レイという少年が様々な出来事を経験しながら少しずつ成長していく、骨太で重厚、王道な面白さを持つファンタジーである。

 

ファンタジーが好きな読者様、玩具箱のような世界が好きな読者様は是非。きっとお楽しみいただける筈である。

 

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