読書感想:出戻り勇者の気まぐれメニュー

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問:隠れた名店と言えば?

 

答:ボンディー(東京、神保町)(入り口がかなり分かりづらい上に店の前が狭い)

 

さて、画面の前の読者の皆様にとって隠れた名店と聞くとどんなお店を連想されるだろうか。お店が分かりにくい場所だろうか、それとも有名ではない場所だろうか。

 

上記の二つの条件が隠れた名店の条件ならば、この作品に登場するレストラン「帰郷」はその条件にこれでもかと言うほどに合致するのである。ではこの店名に隠された真実とは何なのか。

 

それはこのビルの狭間の奥深く、地図の何処にも載っていない店の店主が異世界に召喚され魔王を打ち倒した青年、博史(表紙右端)だからである。

 

そしてこの作品の案内人となるのは地元情報誌の新人編集者、裕子(表紙左)である。

 

博史の同級生だった彼女が再会し、知っていくのは異世界の魔物を食材にした日本でよく見る定番料理。博史が異世界に渡った後に何をしていたのか、という事。

 

ここで重要となってくるのは、博史の異世界での立ち位置、日本と言う嘗ていた世界での立場である。

 

そう、日本での博史の立場は既にない。何故なら彼は失踪してしまった人間であり、既に異世界にどっぷりと浸かってしまった異世界の人間といっても差し支えない人間だから。

 

そして異世界での彼は英雄である。誰も追いつけない英雄であり、いつまでも縋られ頼りにされる英雄である。

 

その立場についてしまった事を当然のように受け止め、魔王が滅んだ後でも頼られるままに戦いを続ける博史。

 

その彼の在り方へと否を突き付けるのが裕子である。

 

「今でも後悔しているのでしょう?」

 

それはこの戦いばかりの異世界では生温い、平和な日本だからこその考え方だったのかもしれない。

 

だけど、だからこそ。心のどこかで平和を愛しこの時間を慈しんでいた博史へと届き、クーデターの流れを変える一言へとなったのである。

 

異世界産日本のご飯でお腹を減らしたい読者様、どこか残酷で哀しい世界の中の一抹の温かさを楽しみたい読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。

 

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