読書感想:豚のレバーは加熱しろ

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吾輩は豚である。名前はない、だって豚だから。

 

さて、画面の前の読者の皆様はもうご存知かもしれないがこの作品の主人公は表紙にもいる豚である。豚野郎と呼ばれる人種の人間でもオーク的な存在でもなく、正真正銘の豚である。異世界に人間以外の存在として転生する作品は数あれど、豚に転生するのは珍しいのではないだろうか。

 

そんな豚といちゃいちゃを繰り広げ純愛を繰り広げるのがこの作品のヒロインであるジェス(表紙左)である。そして彼女がいるからこそ、豚が豚のままで主人公でいられるのである。

 

そもそも主人公、これで何か能力を持っていたら良かったかもしれないが、厳密にいうと転生という形ではないからか、言葉を交わすスキルすらもなく、心の中で思うだけしか出来ない。しかし、ジェスは心の声を聞き取るという不思議な力を持っている。だからこそ会話が成り立ち、通訳と言う形で他者との会話も成り立つのだ。

 

そしてこの作品の見所をはっきりと述べるならば、この作品は間違いなくいちゃいちゃであり、純愛なファンタジーである事だろう。

 

豚と人間では相手にならない、そう言われるとそうかもしれないが主人公は言わば人としての心と知性を持った豚であり、だからこそお世話されたり夜に秘密の会話をしたりする事で心近づけるのだ。

 

ここで重要なのはジェスがイェスマと呼ばれる虐げられる種族である事だろう。

 

小間使い的な仕事しか出来ない、乗り物に乗れない、王都に来ないといけない・・・様々な制約を抱えながらも必死に生きるジェスを襲う数々の災難。その災難へ持ち前の知識と根性で体当たりするかの如く挑んでいく豚。

 

そう、確かに豚と人間ではあるが次々と立ち塞がる問題を解決するというファンタジーの王道の柱はしっかりと打ち立てられており、だからこそ目新しさと王道の面白さが上手く両立されており、そこへ

 

「これからは自分の力で、幸せになってくれ」

 

お互いを想うからこそ辿り着いた一つの愛の形の優しさが温かさを添え、総合的に面白い作品へと仕上がっているのである。

 

あの電撃小説大賞で金賞を獲得した実力は果たして如何程のものか。その確認は是非画面の前の読者の皆様自身で行ってみてほしい。貴方の目に何が見えるか、面白さが見える事をお祈りいたす次第である。

 

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