もしも誰もが持っているはずの可能性を自分だけ持っていなかったら、画面の前の読者の皆様はそこで諦めてしまうだろうか。それとも必死に前へと進もうと藻掻くだろうか。
前作がVRゲームものであった渡葉たびびと先生の新作は前作と同じVRゲームものである。それがこの作品であり、仮想現実だからこそのエフェクト感ある戦いが目白押しの前作からの熱さはそのまま更に過熱されて受け継がれている。
では、前作に無くて今作にあるものとは何だろうか。
それは前作と違い、今作の主人公であるシュウ(表紙右)は世界に愛されず何も得られなったという事である。他の人は誰でも持っているはずのものが手に入れられずに蔑まれ、世界を去って失意の日々を送る彼。
だがしかし、その根底に燻っていたのは否定された世界への憧れ。そして、決して忘れなかったゲームへの情熱。腐ろうとも根底の部分では腐らなかった彼が手に入れたのは、女神から託された最強の力。
その力で挑むは絶対的な格上にして運営と癒着して悪事を繰り返す小悪党。死闘の中、心から叫ぶのはこの世界へと連れて来てくれた女神への思い。
「俺は、楽しく遊んだよ」
そう、ゲームを遊ぶ上で大切なのは何よりも楽しむという事。そんな当たり前のことを奪おうとする敵を倒す為なら限界だって突破する。
これを熱いと言わずして、何を熱いと言えばよいのだろうか。
死闘の先に胸がすくような爽快感のあるお話を読みたい読者様には是非お勧めしたい。勿論前作が好きな読者様にもお勧めである。