読書感想:魔法も奇跡もない、この退屈な世界で

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突然ではあるが、画面の前の読者様に一つ問いかけをいたしてみる事とする。

 

もし、生まれてから死ぬまでの全ての事が予め誰かによって決められそれにそって生きる事を強制されたらそれは生きている事と言えるのだろうか。

 

それは生きているのか死んでいるのか分からないが、きっととても退屈な事だろう。

そんな退屈な世界で何かに抗いながらも自己責任で自由に生きる。それが犯罪者達であり超常の力を心のままに振るう気紛れな狼共である。

 

中々のディストピアに作られた今から数えて二百年ほど後の世界を舞台に、冷凍睡眠から目覚めた21世紀人、ヒナコ(表紙左)が王と礼賛される殺人者、フォルック(表紙右)と出会い凸凹コンビを組み陰謀へと立ち向かうのがこの作品である。

 

特筆すべきはこのヒナコというヒロインの一種の特異性ではないだろうか。

21世紀人、つまりは私達と価値観は同じ。そんな彼女が世界の常識を壊され監視対象に突き放されて殺されかけ、逃げ出してもおかしくないのにも関わらず、犯罪者共についていくために一晩で大切な知識を詰め込んで見せる。そして肝心な時、全てを覆すときの鍵となったのが彼女の旧世代のやり方というのだから彼女はヒロインとしても中々の意味で特異な変化球と言えるのではないだろうか。

 

そんな彼女が頭のネジが外れた犯罪者共に必死に食らいつき危険な中を全力で駆け抜けるこの作品。外連味溢れる戦いが読みたい読者様にはお勧めしたい次第である。

 

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