読書感想:転生王女と天才令嬢の魔法革命3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:転生王女と天才令嬢の魔法革命2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

さて、前巻で王位継承者であるアルガルドと真っ向勝負の姉弟喧嘩を繰り広げ、下す事に成功したアニスとユフィリア。だが果たしてそれは正しい事だったのだろうか。無論、彼を止めなければいけなかったのは確かである。確かなのである。だが、彼を止めた結果何が起きてしまうのか。それこそが王家というものの問題で在り、解決すべき問題なのだ。

 

その問題の正体、それは「王位継承」という問題。前巻でアルガルドは下され、廃嫡された。

 

しかしそれこそが全ての歯車、今まで上手く回っていた歯車を狂わす原因となってしまう。廃嫡されたという事は、もはや王位は継げぬという事。つまり、もうアニスしか残っていないのである、王位を継ぐことが出来るのは。

 

前例などない、自分は王として相応しくない。だとしても、それでも王となる事を望まれ自らもまた課し。その重責と苦悩はアニスを気付かぬうちに追い込み疲弊させ、憔悴させていく。

 

当たり前である。今までは好きな事に全力を裂くだけだった、その十割のキャパシティーを全く別の物に変える事を決意してしまったのだから。

 

そんな彼女を誰よりも間近で見つめ、ユフィリアは決意する。彼女の重荷を取り除く為、何より愛する彼女の為。自分が女王とならん事を。

 

その為に必要なのは精霊との契約。伝説にも刻まれし王の偉業であり、十分なる功績となるもの。

 

だがそれは禁忌へと踏み込む決断。精霊と契約するという事、それは人としての理を外れてしまうという事。かつての伝説の国王の娘、契約者としての先人のリュミは静かに諭す。

 

しかし、ユフィリアに迷いなど無かった。

 

「―――出来る資質があるのと、だからってやらされるのは話が別だろう」

 

王座を継ぐ、その先の未来を想像してしまったから。

 

「―――ただ、お慕いしているからです」

 

ただ慕っているからこそ、彼女だけに重荷を背負わせぬ為に。

 

「私は、貴方を王にしたくなどないのです」

 

「私は、貴方に全てを捧げさせたくない」

 

だがそれは、アニスの一番大切にしている心の芯を奪うという事。そしてアニスもまた、ユフィリアを大切に思うからこそ全てを捧げさせる気なんて更々無くて。

 

なればこそ、決着を。二人の譲れぬ想いをぶつけ合い、全て出し切ってぶつかる事で生まれる結末。それは是非、画面の前の読者の皆様の目で見てみてほしい。

 

叫びにも近い心からの声が響き渡り、譲れぬ想いがぶつかり合う、それが何処までも生に満ちているからこそ、この作品はやはり面白いのだ。

 

前巻まで楽しまれた読者様、王道百合ファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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読書雑記:発売日前恒例、新刊紹介なお話。MF文庫、オーバーラップ文庫、ダッシュエックス文庫編。

こんばんは。一月もそろそろ終わりますが皆さまいかがお過ごしでしょうか。私は今、久しぶりの飲酒でほろ酔いな真白優樹です。では今回は、早い所ではそろそろ発売されている25日が公式発売日の三レーベルの中から、個人的期待の新作及び続刊についてお話したいと思います。

 

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神は遊戯に飢えている。1 神々に挑む少年の究極頭脳戦 著:細音啓先生 絵:智瀬といろ先生

 

ではまずはMF文庫より、こちらの作品から紹介です。最早説明不要かもしれませんが、ファンタジーの旗手であられる細音啓先生の新作となります。今度は神々とゲームで対決との事で、既にかなりの有識者の方々から支持を集めているようですが、果たしてどんな遊戯が待っているのか。楽しみです。

 

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裏社会最強の男、終末異世界を愉しむ。 終幕に捧ぐ反逆転劇 著:水城水城先生 絵:つくぐ先生

 

二作品目はこちら。様々なレーベルでバイオレンス&スプラッタな作品で人気を博する水城先生の新作となります。今度も何やらとんでもないダークな気配がしますが、どんな作品となるのか。楽しみですね。

 

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お嫁さんにしたいコンテスト1位の後輩に弱みを握られた 著:岩波零先生 絵:阿月唯先生

 

三作品目はこちら。MF文庫で幾つかのシリーズを手掛けられてきた岩波先生の新作です。今度は推し活が絡む秘密のラブコメという作品らしく、どんなラブコメが待っているのか。期待したいですね。

 

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義妹生活 著:三河ごーすと先生 絵:Hiten先生

 

四作品目はこちら。MF文庫で様々な人気のシリーズを手掛けられている三河ごーすと先生の新作となります。こちらは動画サイト原作との事で、恋愛生活小説とはどういう事か。そのあたりを楽しみにしたいと思います。

 

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きゅうそ、ねこに恋をする 著:三月みどり先生 絵:Tota先生

 

五作品目はこちら。こちらもMF文庫でかつてラブコメを手掛けられていた三月みどり先生の新作です。窮鼠が猫に恋をするとどうなるのか。楽しみです。

 

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聖剣学院の魔剣使い6 著:志瑞祐先生 絵:遠坂あさぎ先生

 

ではMF文庫Jからのピックアップとしては最後、六作品目はこのブログでも記事にいたしました作品の続刊となります。前巻の最後でいよいよ正体バレか、となる所でしたのでどうなるのか。楽しみにしたいと思います。

 

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カンピオーネ! ロード・オブ・レルムズ2

著:丈月城先生 絵:BUNBUN先生

 

ではここよりはダッシュエックス文庫の紹介です。まずはこちら、このブログでも記事にいたしました作品の続刊となります。どんどんとクロスオーバーが深まるであろう中、どんな戦いが待っているのか。楽しみですね。

 

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王立魔法学園の最下生 ~貧困街上がりの最強魔法師、貴族だらけの学園で無双する~ 著:柑橘ゆすら先生 絵:青乃下先生

 

二作品目はこちら。様々なレーベルで作品を手掛けられている、小説家になろうの大家とも言える柑橘ゆすら先生の新作となります。今度の作品はダーティな匂いのあるファンタジーとの事で、どんな面白さと戦いがあるのか。楽しみです。

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パワハラ聖女の幼馴染みと絶縁したら、何もかもが上手くいくようになって最強の冒険者になった ~ついでに優しくて可愛い嫁もたくさん出来た~ 著:くさもち先生 絵:マッパニナッタ先生

 

ダッシュエックス文庫最後の作品はこちら。小説家になろうより書籍化される作品となります。なろうではまだまだ多い追放系のこちらの作品、果たしてどう魅せてくるのか。期待したいですね。

 

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TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す3 ~ヘンダーソン氏の福音を~ 著:Schuld先生 絵:ランサネ先生

 

 

では最後はオーバーラップ文庫からの紹介です。まずはこちら、やはりこの作品もこのブログでも記事にいたしました作品の続刊となります。今度は命がけの迷宮攻略との事で、また生き残れるのか。最大の窮地をどう乗り切るのか。楽しみにしたいと思います。

 

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星詠みの魔法使い 1.魔導書作家になれますか? 著:六海刻羽先生 絵:ゆさの先生

 

二作品目はこちら。第七回オーバーラップ文庫大賞で栄えある金賞を受賞された作品となります。王道なファンタジーの香りが凄く漂うこちらの作品、どんな面白さがあるのか。楽しみです。

 

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Re:RE ―リ:アールイー―1 転生者を殺す者

著:中島リュウ先生 絵:ノキト先生

 

二作品目はこちら。第七回オーバーラップ文庫大賞で銀賞を受賞された作品となります。こちらはどうやら、異世界からの転生者との戦いを描くと言う事で、どんな戦いが待っているのか。独特の戦いを楽しみにしたいと思います。

 

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今日から彼女ですけど、なにか? 1.一緒にいるのは義務なんです。

著:満屋ランド先生 絵:塩かずのこ先生

 

では最後の作品はこちら。こちらも銀賞を受賞された作品です。こちらはどうやらラブコメとの事で、どんなラブコメが待っているのか。楽しみにしたいと思います。

 

以上、期待の十三作品でした。ではまた、今月も読んでいきましょう。

読書感想:シェアハウスで再会した元カノが迫ってくる

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は元カノ、元カレと呼ぶであろう存在はあるであろうか。忘れられぬ別れ方をした、という読者様はおられるだろうか。

 

ではここからこの作品の感想を書いていかんとするが、まず初めに試験的な試みとして、この作品についての感想はいつもとは違う書き方をする事をお許しいただきたい。いつもの方が読み易いか、今回のような形の方が読み易いか。コメント欄で宜しければ教えていただきたい次第である。

 

・「いちゃ甘ではなくじれ甘」

 

これは作者であるくろい先生が言われている事であるが、この作品はじれ甘である。何故じれ甘なのか。それはこの作品の主人公である悠士とヒロインである真冬(表紙)が元恋人同士という関係だからである。しかも二人は互いに浮気されたと思い別れてしまった恋人同士なのである。ではこの作品の面白さは何処から来るのか。これより二つの項目に纏めて話していきたい。

 

面白さその一:シェアハウスという舞台

 

 まず初めに面白さの根幹を為しているのはこの作品の舞台であるシェアハウスという舞台である。シェアハウス、それは互いの生活を成り立たせるために独自のルールが必要な場所であり、共同生活という事で仲間であり家族である他人がすぐ側に存在する場所。だが時に二人きりになる事もある。この説明を聞いて、画面の前の読者の皆様は何かを連想されるであろうか。そう、この要素は一部を除いてしまえば「同棲」という恋人同士の生活様式と同じである。そしてこの要素、中々二人きりになれぬという要素が「じれ甘」という甘さを際立たせているのだ。

 

面白さその二:「じれ甘」という甘さ、その本質。

 

 では「じれ甘」とは一体何なのであろうか。勘のいい読者の皆様であればもうお気づきかもしれないが、実はお互い浮気していたというのは誤解と勘違いである。無論そうでなければ、じれ甘なんて成立する事もないのは明白である。

 

ではお互い誤解であると分かった二人の心の中に燃え上がった心は何か。それは「好き」という想い。忘れられなかったお互いへの好意なのである。

 

「なんで、真冬とまた恋人になりたいって思っちゃうんだろうな」

 

どうしようもなく元カノの事が気になる、悠士。

 

「眉毛が微妙だって言いたかっただけ。顔は良いんだし、勿体ないから私に整えさせてよ」

 

別れた筈なのに、気が付けば一緒に過ごせる口実を追ってしまう真冬。

 

お互い今は関係のない筈なのに、相手の事がどうしても気になってしまう。誰かと仲良くしているのを見て、もやもやしてしまう。なのにあと一歩が踏み出せぬ。その一歩を詰めさえすれば。そう思わせてくれるのに。

 

正に一番近くて一番遠い。それが今の悠士と真冬の間に空いた距離なのである。

 

・だからこその面白さ、というお話。

 だからこそもう一度ここから、また初めから。お互い同棲しながらも失敗ばかりでぶつかってばかり。だけどここからなら、きっとやり直せるから。

 

時間は必要だと分かってはいる。だけどそれでも、いけ、そこだと言いたくなってしまう。

 

だからじれったくてこそばゆい、正しく「じれ甘」。そして二人の想いはもうはっきりしている。後は一歩、踏み出すだけ。

 

そんな一見捻っているように見えて王道ど真ん中の甘さが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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読書感想:魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はファンタジーはお好きであろうか。若しくはサイバーパンクな近未来的な世界はお好きという読者様はどれほどおられるだろうか。ではもし、未来の世界で魔法が使えるようになっていたら、貴方はどんな魔法を使われたいであろうか。

 

かつてとある異世界、魔法が存在する異世界で聖剣を携える勇者、グラム(表紙左から三人目、青マントの人物)に討たれた不死なる魔王、ベルトール(表紙右端)

 

だがしかし、五百年の時を経て儀式の完遂により復活した彼の目に映る世界は、とんでもなく様変わりしていた。かつての世にはなかったものが溢れ、夜の闇の中にも無数の光が乱舞する世界へとなっていたのだ。

 

それもその筈である。何故なら世界は、現想融合という融合現象を経て、機械が発達した欲し、我等が地球と融合してしまっていたから。そしてベルトールが復活した場所は、魔導工学という新たな工学が発展し、「ファミリア」と呼ばれる魔導具とエーテルリアクターを元に発展を遂げた都市国家、「新宿市」だったのだ。

 

時を経ても変わらぬ忠誠を送る忠臣、マキナ(ベルトールの左上)に支えられ案内され、まずは超巨大企業の社長となっていたかつての配下の一人、マルキュス(表紙左上)へと接触を図るベルトール。

 

 だが、自らが魔王になると言う欲望を抱えたマルキュスは既にベルトールを裏切っており、彼の手によりファミリアはベルトールには適合しないよう作られていた。そして信仰も失ってしまった彼は今、最弱の存在へと身を墜としていた。

 

早急に信仰と畏怖を集めねば戦力にも事欠き、更には食い扶持を得なければ生活すら出来ぬ。

 

「こんばんモータル~、どうもー定命の者共、生の苦しみ味わってる? 魔王ベルトール=ベルベット・ベールシュバルト、即ち余である」

 

マキナの友人であるハッカー、高橋(マキナの左下)に提案を受け彼はライブストリーマーという今時な仕事を始め、収入を得ていく。

 

そして、彼はそんな新しい生活の中で知っていく。今までとは全く違う生き方、そしてこの新宿という都市に隠された凄惨な真実。不死なる者達を生贄にし、この都市は稼働しているという真実を。

 

「・・・・・・勇者と魔王が手を取り合うとは、今まで考えた事もなかった」

 

「僕もさ」

 

一連の事態の裏にいた黒幕、マルキュスに拉致されたマキナを救うべく、不老の加護により生きていたグラムと一時共闘し。

 

「戯けが。五百の星霜で耄碌したか。我こそは闇の梟雄、魔王ベルトール。悪逆非道こそ我が王道よ」

 

そして、新しき生活の中で知ったあの日の負けた理由、「命の輝き」の意味を胸に。不忠な輩へと、裁きの鉄槌を繰り出して見せる。

 

 科学と魔法が交差し融合し、目の前に広がる未知の世界。そこで繰り広げられるのは、魔王の成長とあの日と変わらぬ悪の覇道。

 

正に古きと新しきが絶妙な感覚で噛み合っており、そこに王道という芯を通しているからこそ、この作品は面白い。正に大賞に相応しいのである。

 

サイバーパンクな世界が好きな読者様、ファンタジーの王道が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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読書感想:剣と魔法の税金対策

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消費税、市民税、県民税、確定申告。これらの用語は全て税制に関わる用語である。税制に関して、画面の前の読者の皆様はどう思われるであろうか。私個人としては給料からの天引きという形で勝手に回収されているけれどイマイチ役立つ使い方をされている印象はないが。ではもし、現代世界ではなくファンタジー的な異世界に税制があったら一体どうなってしまうのであろうか。

 

「我の配下となれば、世界の半分をくれてやろう!」

 

「え、マジ!? わかった!」

 

とある異世界にて今まさに始まろうとしていた勇者メイ(表紙中央)と魔王ブルー(表紙右)の決戦。が、その決戦は始まる前に終わろうとしていた。魔王によくある台詞である世界の半分をくれてやるから配下になれと言う言葉に、銭ゲバな一面をもつメイが反応してしまった事により。

 

世界の半分を手に入れ、めでたしめでたし・・・で終われれば良かった。だが終わらなかった。突如現れた天使、ゼオスは二人に告げる。

 

贈与税がかかります」

 

そう、ゼオスは「税」を司る天使であり、この世界は何と「税」に関する制度が根幹を司る世界だったのである。

 

考えてみれば当たり前かもしれない。世界の半分に贈与税がかかるのならば、そうなってしまう筈である。

 

その課税を何とかする為、偽装結婚をするメイとブルー。しかし魔王城の経理を監査したゼオスはザル過ぎる経理に追徴課税を課し、三か月の納税猶予を与えてくる。

 

進退窮まる勇者と魔王。そんな二人は過去の魔王が遺した手がかりから最後の希望を見つけ出す。その名はクゥ・ジョ(表紙左)。世界最後の「ゼイリシ」の少女である。

 

まずは魔王城の家事按分を申告し半額に。更には魔王城の魔物達の福利厚生費、深夜手当、残業代を計上し国債を売りつけ、新たな産業を興したり。

 

正しく八面六臂の大活躍。だけどそれをよく思わぬ輩も存在する。その正体、それは戦争が続く事で得をむさぼる悪党共。彼等の卑劣な手により時間は削られ、約束の刻限は来てしまう。

 

だが、それを助けるものがあった。それは、ブルーの無償の優しさ。誰かに施してきた善行が、巡り巡って助けとなる。正しく、「情けは人の為ならず」と言わんばかりに。

 

「これが最後の確認です。申告は、先程のでよろしいのですね?」

 

「あります!!! まだあります!!」

 

異世界も税制があったら世知辛い。けれどどんな世界でも、善行の尊さと人の温かさは変わらない。

 

読むと少しだけ税に関して詳しくなれるかもしれないこの作品。

 

税について知りたい読者様、独特の温かさが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々4

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前巻感想はこちら↓

読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

さぁーて(以下二回目につきマンネリを危惧したのでイカ省略)。そんな微妙に滑っているであろう寸劇はいったん脇にでも置いておいて、ひきこもりたいけれど最強の力に邪魔をされる我等が主人公、テラコマリ。全ての種族を巻き込んだ大戦も一段落し、ようやく落ち着いて休めてひきこもれる・・・訳もなく。やっぱりどうしたって引きこもれないのがこのシリーズな訳である。

 

戦いも小休止、かと思えば前巻で盟友となった遥か東の国、天照楽土に属するカルラ(表紙左)に誘われ、外交使節として赴く事になるコマリ。

 

辿り着いたは桜花舞い踊る雅かつ風流な和の国。そんないつもとは違う日々の中、とりあえずのんびり・・・という訳にもいかず。奇しくも天照楽土は今、国の長である大神の後継者を決める天舞祭というお祭りで盛り上がっていた。

 

そうは言っても他国の争いである。外交使節として訪ねてきている自分には関係が無い、筈だった。

 

だが、そうは問屋が卸さないとばかりにとある事件の嫌疑をかけられ挙句の果てに、天舞祭の戦いの中へカルラ陣営の一員として巻き込まれる事になってしまって。

 

 コマリにとってこの戦いは避けられる戦いの筈だった。関わらなくても良い筈だった。しかし彼女は目撃してしまった。カルラという一人の少女の内心、そして夢を。

 

天神として生きる事を求められ、だけど心は戦いを拒む。自分には誰にも譲れぬ夢、お菓子の店を出すと言う夢があると心が叫ぶ。

 

それはまるで、何処か自分のように。今まで生きてきた境遇は違えど、自分とカルラは何処か似ていた。

 

 だからこそ今、見逃す事は出来ない。ならばこそ、コマリは今、自分の足で戦場へと向かい、カルラの手を引き勝利の為に駆ける。あの今まで受動的であったコマリが、初めて自分の意思で。

 

「・・・・・・コマリさん。私に力を貸していただけませんか。覚悟ができている、といったら嘘になるかもしれません。でも・・・・・私は大神になって天照楽土のことをもっと知りたい。だから、お願いです。どうか私と一緒に戦ってください」

 

その姿に優しく背を押されるかのように、カルラもまた自らの意思で立ち上がる。

 

「かるらのゆめを、ばかにした」

 

そしてカルラの夢を笑った賊へと繰り出されるは新たなる力。流れる時を味方にする、正に最強無敵の一撃。

 

今までとは違う行動、芽生え始める力への自覚。そして動き出す、テロリストたちの魔の手。

 

いよいよここから、本番とばかりに動き出す今巻。

 

だからこそ、きっとここから全ては始まる。その様を是非、見届けてほしい。

 

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読書感想:俺とコイツの推しはサイコーにカワイイ

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斗和キセキ様、おめがシスターズ様。さてこの二組に共通する要素は何であるかという問題を出してみても、Vtuberという答えがすぐに導き出されるであろう。画面の前の読者の皆様であればきっとそうだと信じている。では画面の前の読者の皆様は推しのVtuberの方はおられるであろうか。その人への愛ならだれにも負けないと自負している推しの方はおられるであろうか。

 

 高校一年生、控え目な性格で周りから目立たず、どちらかと言えば孤立気味な少年、アズマ(表紙中央奥)。彼の幼馴染であり、露出を嫌い気弱な性格ゆえに周りから孤立気味な少女、ロコ(表紙右)。

 

しかし二人には、自分が置かれた状況なんてどこ吹く風と言わんばかりに夢中になれる存在があった。その名は∞ギンガ。動画サイト上でまだまだ未熟ながらも必死に活動する電脳アイドルである。

 

そんな電脳アイドルの中身の少女の名はアゲハ(表紙左)。アズマとロコのもう一人の幼馴染であり、クールで無口な性格ゆえに周りから孤立気味な少女である。

 

だがしかし、彼女は今夢を叶える為に電脳アイドルという道を邁進していた、故に気にもしていなかった。

 

お気づきであろうか、画面の前の読者の皆様。アズマ、ロコ、アゲハ。三人に共通する要素を。それは「孤独」であるという事。それぞれの性格ゆえに周りから浮いていて、だけどそれでも気にしていない同士。だが三人は幼馴染であるが、いつしかすれ違い離ればなれとなってしまった者達だ。

 

だけど今、お互いに∞ギンガの中身を知っている同士という事でアズマとロコは繋がり、その様子を見たアゲハは二人が愛し合っていると勘違いしてしまう。

 

その勘違いをこれでもかと、だが息ぴったりに否定しながら推し活動に励む二人は互いの愛をさらけ出しぶつけ合い、まるで相乗効果であるかのようにお互いの愛を深めていく。

 

だが、足りない。この輪には何かが足りない。それは誰か。言うまでもないだろう、足りないのはアゲハである。

 

 

一人じゃ寂しいから二人で手を繋ぎ、二人じゃ寂しいから三人で手を繋ぐ。

 

愛するだけじゃ進めない。本当の意味で繋がって、循環させる事が出来たのなら、きっと本当の意味で進める。

 

「二人とも大好き。あなたたちがいてくれたから、私は電脳アイドルとしてここまでこられた」

 

どちらの愛が好きとかじゃない。二人の愛が好き、アズマとロコ、二人の事が大好き。だからこそ、二人が背を押してくれるからこそ何処までも進める。

 

 この作品は、すれ違っていた三人の幼馴染が現実と電脳が交差する世界で、また友達としてやり直していく作品である。そしてファンとアイドルが一体となり、「アイドル」を作り上げていく作品なのである。

 

すれ違い、ぶつかり合い、向き合って、分かり合う。そんな青臭くて粗削りで、だけど純粋で瑞々しいこの青春を尊いと言わずして、何を尊いと言えば良いのだろうか?

 

絆を結ぶ尊さが好きな読者様、青春と友情が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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