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読書感想:転生王女と天才令嬢の魔法革命2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で王位継承者であるアルガルドと真っ向勝負の姉弟喧嘩を繰り広げ、下す事に成功したアニスとユフィリア。だが果たしてそれは正しい事だったのだろうか。無論、彼を止めなければいけなかったのは確かである。確かなのである。だが、彼を止めた結果何が起きてしまうのか。それこそが王家というものの問題で在り、解決すべき問題なのだ。
その問題の正体、それは「王位継承」という問題。前巻でアルガルドは下され、廃嫡された。
しかしそれこそが全ての歯車、今まで上手く回っていた歯車を狂わす原因となってしまう。廃嫡されたという事は、もはや王位は継げぬという事。つまり、もうアニスしか残っていないのである、王位を継ぐことが出来るのは。
前例などない、自分は王として相応しくない。だとしても、それでも王となる事を望まれ自らもまた課し。その重責と苦悩はアニスを気付かぬうちに追い込み疲弊させ、憔悴させていく。
当たり前である。今までは好きな事に全力を裂くだけだった、その十割のキャパシティーを全く別の物に変える事を決意してしまったのだから。
そんな彼女を誰よりも間近で見つめ、ユフィリアは決意する。彼女の重荷を取り除く為、何より愛する彼女の為。自分が女王とならん事を。
その為に必要なのは精霊との契約。伝説にも刻まれし王の偉業であり、十分なる功績となるもの。
だがそれは禁忌へと踏み込む決断。精霊と契約するという事、それは人としての理を外れてしまうという事。かつての伝説の国王の娘、契約者としての先人のリュミは静かに諭す。
しかし、ユフィリアに迷いなど無かった。
「―――出来る資質があるのと、だからってやらされるのは話が別だろう」
王座を継ぐ、その先の未来を想像してしまったから。
「―――ただ、お慕いしているからです」
ただ慕っているからこそ、彼女だけに重荷を背負わせぬ為に。
「私は、貴方を王にしたくなどないのです」
「私は、貴方に全てを捧げさせたくない」
だがそれは、アニスの一番大切にしている心の芯を奪うという事。そしてアニスもまた、ユフィリアを大切に思うからこそ全てを捧げさせる気なんて更々無くて。
なればこそ、決着を。二人の譲れぬ想いをぶつけ合い、全て出し切ってぶつかる事で生まれる結末。それは是非、画面の前の読者の皆様の目で見てみてほしい。
叫びにも近い心からの声が響き渡り、譲れぬ想いがぶつかり合う、それが何処までも生に満ちているからこそ、この作品はやはり面白いのだ。
前巻まで楽しまれた読者様、王道百合ファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。
きっと貴方も満足できるはずである。
転生王女と天才令嬢の魔法革命3 (ファンタジア文庫) | 鴉 ぴえろ, きさらぎ ゆり |本 | 通販 | Amazon